猫の湯~きみと離れていなければ~

謝られるとなんだかこっちまで申し訳なくなってくる。

でも感謝されると、一緒によろこびやうれしさを共有しあえた気持ちになれた。


陽向が『ありがとうって言ってほしい』って言っていたのはこういうことなんだね。



「副会長、気づかせてくれてありがとうね」

「なにがだ? 」

「ううん、なんでもない」


わたしは照れを笑ってごまかした。


「変な娘だな。それでだ…」


副会長はもう一度毛並みを軽く整えると、話の続きをはじめた。


「あのときにお前が落としたとんぼ玉だが、俺が拾ってある所に届けている」

「拾っててくれたの? 無くしたと思ってこれから探しに行こうかと思っていたの」


というか、わたしの落とし物ってわかっているのに、わざわざ別の人に届けたってこと?

なんでそんなまわりくどいことをしたんだろう?


「それでどこにあるの? 」

「これから一緒に受け取りに行く」

「これから? …やだ」

「にゃあ? 」


わたしの返事が予想外だったのか、驚いたような副会長は目玉がこぼれ落ちそうなぐらいに目を見開いた。
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