猫の湯~きみと離れていなければ~
「こんな時間に訪れれるわけないじゃない。 副会長には常識ってものがないの? 」
「お前はやっぱりバカなんだろうな。…いや、それともアホなのかもしれないな 」
こんな非常識な化け猫にバカとか言われてるわたしって一体…。
「鈴、とりあえず俺のしっぽを掴め」
「しっぽ?」
とりあえずも掴むも、どういう意味か分からないけれど、言われた通りに副会長のカギしっぽを優しく持った。
ふわふわとして思ったよりも柔らかい毛の奥に、固い骨がカクカクと曲がっていて、そしてしっぽの先は2つに枝分かれしていた。
こんなしっぽをしている猫って他にみたことがない。
「これでいいの?」
「もっとしっかり掴め。いいと言うまで決して離すなよ」
なんでこんなことをしているのか理由が分からない。
言われたとおりにぎゅっと握りなおすと、副会長のひげがピクピクと動き、そして金色の瞳がキラリと光った。
「さぁ、出発だ」