猫の湯~きみと離れていなければ~
「くだらない心配をするな。遠出したぐらいでその糸が切れるわけがないだろう。ハサミでもチェーンソーでも、物理的に切ることは不可能だ」
「知らないんだから仕方ないじゃない」
また上から目線だし。
でもしつこいと思われてもいい。
命がかかっているんだから、わたしはもう一度聞いてみた。
「本当に切れないのね? 」
「お前の体が死なない限りは大丈夫だ。まぁ死神殿の鎌でなら話は別だが、ここには入ってこれないから心配無用」
「…え?」
今、死神って言った? 死神の鎌って言ったよね?
大きな鎌を持った黒いフードを被っている骸骨顔の死神の、一般的な姿が思い浮かんだ。
副会長が当然のようにさらっと言ったってことは、存在するってことなんじゃないの?
まぁ、2本足で歩いている猫がわんさかいるんだから、死神ぐらいいてもおかしくはないとは思うけど。
「じゃあ元人間ってもしかして? 」
「幽霊ってやつだ。肉体が滅びて魂だけのあの世の住人だ。あそこにいるのもそうだな」