猫の湯~きみと離れていなければ~

「ここは先に旅立った猫が飼い主を待つための場所でもある」


再会の場面に胸がせつなくなってくる。


「じゃあ、あの猫はおばあちゃんと天国にいくの?」

「それは本人たち次第だな。最近はここに残る猫も増えているのが実状だ」

「せっかく会えたのにどうして?」

「ここは猫には住みやすい町になっているし、待っている間にここで新しく家族を持つ猫もいるからな。家族ができればそう簡単には離れられないだろう」


確かにそう言われればそうだよね。
残された家族はつらいよね。
でも迎えにきた家族だってつらいはず。


「まぁ最近は、通行税の緩和と猫ブームにのって猫町が観光名所になっているからな。あの世の連中がイベントやツアーを企画しているし、昔と違って都合の良いときにいくらでも会えるようになったしな」


あの世にもブームとか旅行ツアーがあるなんて。
なんだか“この世”とあまり変わらなそうな感じなのかもしれない。

まぁ行った、…逝ったことがないから分からないけれど。

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