猫の湯~きみと離れていなければ~
客引きしている3匹がわたしたちに気づき、こっちを見ながらヒソヒソと話し合いはじめた。
副会長はわたしの手、というよりも指をむぎゅと握ると引っ張るように小走りに通りすぎた。
「露骨に避けすぎじゃない? 」
「黒猫は縁起が悪いって言ってたのはお前だろ? 」
「それを迷惑だと言っていたのは副会長でしょ? 」
黒猫が『黒猫は縁起が悪い』という突っ込みどころ満載のセリフに、わたしはおかしくて思わず吹き出してしまった。
そして少し進むと副会長は角を曲がり、細い道に入った。
そこは大通りとはガラリと雰囲気が違って、長屋や民家が立ち並び、生活感に満ちている。
井戸の側では何匹かの猫が話をしながら野菜や洗濯物を洗っていた。
「ねぇ、どこまで行くの? 」
「この先の突き当たりだ。ほら、見えてきたろ」