猫の湯~きみと離れていなければ~
「スマホを開発したのは俺たち猫だぞ? 肉球派の猫にとっては携帯のボタンより画面の方が使いやすいからな」
あきれた顔をした副会長は、今絶対にわたしをバカって思ってるに違いない。
「他にも代表的なのは床暖房とブラウン管のテレビ。最近ではエンジン音の少ない電気自動車だな。あれは音にデリケートな俺たちにとっては画期的な発明だった」
副会長は首をふりながら感嘆のため息をもらした。
「猫にとって快適な物が開発されては、お前たちの世界に広めてやっている。これが隠された真実だ」
なんだか衝撃的な話。
どこまでが本当なのか分からないけれど納得はできるし、副会長が上から目線で話しているのも少しだけ許せるような気がしてきた。
「じゃあ、長さんって?」
「俺のこちらでの呼び名だ」
陽向が呼んでいるあだ名と一緒。
偶然すぎて笑いが出てきそうだけどこらえておいた。
「じゃあわたしも長さんって呼んでもいい?」
「…くだらんことをいちいち聞くな」
そう言いながらも副会長は照れているみたいで、ヒゲをピクピクっと動かし目を細めた。