猫の湯~きみと離れていなければ~
「ああ。しかし学校でもな、時々だが牛乳を持ってくる生徒がいるんだよ。もちろん俺は飲まずに置いておくのだが、夏場は地獄になるぞ」
「どうして?」
「去年の夏休みなんてそのまま放置されて、とんでもない臭いを発するムースに化けやがった」
思い出したのか副会長はブルブルと身震いを始めた。
よっぽどの思いをしたんだろう。
わたしは励ますようによしよしと背中をなでた。
「長さんも苦労があるんだね」
「当然だろ。でもな、陽向が持ってきてくれた鮭、あれは脂がのっていて絶品だったな」
今度は舌なめずりをして幸せに浸りだした。
てんこ盛りのご飯を空っぽにしていたのに、やっぱりあのサーモンのお刺身を食べたんだと思うと、わたしは副会長のたぷたぷのお腹に自然と目がいった。