猫の湯~きみと離れていなければ~
お祭りを見ているかのように楽しそうなママ。
その手をつかむと引っ張り、誰とも目を合わせないようにうつむき加減で人の波間を縫いながら、どうにか校門を抜けることに成功した。
途中でママが「入学式」と書かれた看板の前で写真を撮りたがっていたけれど、どの家族も考えることは同じようで順番待ちの列はできていたし、撮影のときに待ってる人たちの視線に晒されるのは絶対に嫌だった。
「人が多いから、帰りに撮ろうよ? 」
守るつもりのない約束をママと交わして、わたしはその場を切り抜けた。