猫の湯~きみと離れていなければ~
「やられたよ、龍宮のやつらにはとことんやられた。 鈴、あんたも『龍宮城』って名前ぐらいは聞いたことあるんじゃないかい? 」
「えーと、ここのは知らないです。わたしが知ってるのはおとぎ話の龍宮城ぐらいで」
浦島太郎と乙姫さまのお話なんて、この猫町には関係あるわけないけど、遇さんが怖くなってきたからやんわりした話で少しでもなごめば
と思いながら答えてみた。
「それさねっ…、あんたのお国の人間のほとんどに知れ渡っているんだにゃ! 」
興奮と怒りのせいでか、遇の語尾に『にゃ』が付きはじめた。
「え? ここの龍宮城があの龍宮城ってことなの? 」
わたしは驚いて副会長の顔をみると、副会長はゆっくりとうなずいた。
「あそこの宣伝部長が時間をさかのぼって宣伝活動をしたにゃっ! それがあの有名な『浦島太郎』の話にゃーっ」
たしかにおとぎ話になれば誰もが子供のときに聞くから、宣伝費用なんてかからない。
とすれば、
わたしは遇のお怒りに油を注いだことになる。