猫の湯~きみと離れていなければ~
「あーあ、やられたにゃ。時間を越えるなんて違法行為なのに、そのおかげで猫町が賑やかになったからおとがめなしなんておっかしいにゃっ。おかげで観光客は龍宮城に取られっぱなしにゃーっ! 」
「母様、母様落ちついてっ。鈴さんの前ですにゃん」
宮が番台から身をのりだし遇を落ち着かせようと声をかけるけれど、遇の耳にはまったく届いていないようで。
「鳳凰様の像を『あれは閑古鳥じゃん』って笑われて黙っておれるわけがないにゃっ! 」
遇は目をつり上げ、口を大きく開いて凄い形相で怒りはじめた。
一瞬、舌先から炎が見えたような気がする。
みかねた宮が番台からぴょんと降りて、遇を押さえ込むようにしっかりと抱きついた。
さっきは見えなかったけど、宮のしっぽは丸くて短くて、まるでタンポポの綿毛みたいにふんわりとしていてとても可愛らしい。
「あいつらは、あの厚化粧の化け猫乙姫と宣伝部長の虎は冷徹非道で金の亡者にゃーっ 許せないにゃーっ」
「それなら母様も負けてはおりませんにゃん」
多分気のせいではない。遇の口からは炎がチラチラと見えるし、宮と比べると体の大きさが2倍にはなっている。
最近の猫って怒ると火を吐き出して大きくなるものなの?
それともこの世界が特殊なだけなの?