猫の湯~きみと離れていなければ~
「ほら、鈴さんに挨拶をおし」
「こんにちは。ボクは住み込みで働いている倫ですにゃ」
倫はペコリと礼儀正しく頭をさげた。
「こんにちは倫くん。わたしは風森 鈴です」
わたしはしゃがむと倫の目線に合わせて微笑んだ。
「鈴さんはいい匂いがするにゃ」
倫は気は弱そうだけど人なつっこい猫らしく、頭をすりよせてくる。
わたしはその気持ちにこたえて、いい子いい子と優しく撫でてあげた。
「甘えん坊の猫ですまないねぇ。滞在の間は宮と倫があんたの身の回りの世話をするからね」
「ふつつかものですが、よろしくお願いしますにゃ」
倫はもう一度頭を丁寧に下げた。
「滞在って? わたし、落とし物を受け取りにきたんです。…よねぇ? 」
湯治や滞在目的できたんじゃないんだけど。
ここでとんぼ玉を預かってもらっているんじゃないの?
わたしは副会長にたずねた。