猫の湯~きみと離れていなければ~
「うそ、これ本当に?」
「嘘などつく必要がない。まぁ時間は生きているから、急激に流れが変わることも止まることもあるけどな」
ここに至るまでに不思議なことがたくさん起こっているし。
副会長の言葉を信じて受け入れるしかないのだろうけど、やっぱり信じがたい。
「…それにわたし、お風呂代も宿泊費もなにも持ってないけど」
わたしのその言葉に遇がケラケラと笑いだした。
「あんたからお代なんて取ったりしないよ。そんなことをしたらバチが当たっちまう」
「どういうことなんですか?」
「気にするなってことさ。倫、鈴の部屋の準備をしておいで。鳳凰の間だよ、いいね? 」
「はいにゃ。鈴さんごゆっくり」
倫はもう1度わたしにすりよると、投げ出したバケツを拾っていそいそと去っていった。
気にするなって言われても無理だと思う。
誰がわたしのためにお金を払うっていうんだろう。
まさか長さん? …って、そんなわけなさそうだし。