猫の湯~きみと離れていなければ~
「母様、暖簾を降ろしてきたにゃん。営業時間も1時間後にしてきたにゃん」
宮はクリーニングの透明な袋に入った浴衣を持って戻ってきた。
湯上がりにわたしが着るものっぽい。
「さすがあたしの自慢の娘、気が利くねぇ。じゃあ宮、お前には鈴の手伝いを頼んだよ 」
「はいにゃん。鈴さん、こちらへどうぞ」
これから本当に銭湯に入ることになるんだ。
強引すぎる流れに不安になってくる。
「ねぇ長さん? わたしが出てくるまで待っていてくれるんでしょ? 」
“絶対に待っていてね”という気持ちをこめてたずねてみた。
みんな優しそうな猫ばかりなんたけれど、この世界で頼れるのって、一緒にここに来た副会長しかいない。
「当然だ。俺は奥の部屋にいるからスッキリしてこい」
「うん。絶対だよ」
少しだけ安心したわたしは、先導する宮について行った。