猫の湯~きみと離れていなければ~

でも、“人様”“猫様”と区分されている深さの違う湯船。

そして

“猫様専用サウナ”と書かれているガラス扉の中を覗くと、そこにはこたつとストーブが置かれていた。

多分、これらは特殊だとは思うけれど。



わたしは体を洗い終えると、迷うことなく人様用の湯船に入った。


体を洗っていた蛇口のお湯とは違って、温泉のお湯はなめらかで、熱くもなくぬるくもない絶妙な温度。

そしてほんのりと、あまい花のような香りがする。


頭のてっぺんまで浸かりたい。

このまま全身を溶け込ませてみたい。


そう思えるほど心地よくて仕方がない。


昨夜は熱のせいでお風呂に入れてなかったし、こんなに広いお風呂を一人で入ることなんてないし。
だから余計に気持ちがいいのかもしれない。


それにしても

不思議なところに来てしまったなって思う。

なんでこんなことになっているんだろ。


副会長がしゃべって、幽体離脱して、猫まみれの町にいる。

『あのお方』って人? 猫? も気になるし。

とんぼ玉を持っているのも『あのお方』なの?


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