猫の湯~きみと離れていなければ~
パタパタと何かが走り回る音で目が覚めた。
「…ん、ママ? 」
でもママからの返事はない。
間接照明で暖かな雰囲気の和風の部屋。
間違いなくわたしの部屋じゃない。
ここどこ?
寝たままキョロキョロと辺りを見ると、障子の向こうは暗く、壁掛け時計の針は2時22分をさしている。
どうやら夜中の2時っぽい
あ、そっか、
副会長に連れられて猫町に来たんだった。
銭湯の中で嗚咽するほど泣いちゃって、のぼせてしまってここに運ばれて、そのまま眠ってしまったんだっけ?
いい年してあんな泣きかた。
恥ずかしくて、遇さんたちにどんな顔をして会えばいいのかわからない。
わたしは毛布を頭までかぶって顔を隠した。
ふわふわですべすべの肌触りがとても気持ちいい毛布は、またわたしを眠りへと誘おうとする。
「へんなのー、ママだってー」
「すずはまだあかちゃんなんだねー」
可愛いらしい声が枕元のすぐ側で聞こえる。