猫の湯~きみと離れていなければ~

そう考えていると、2匹はわたしの足から伸びている銀色の糸に気づいたらしく、じゃれあいはじめた。


「だめだめ、それは触ったらだめだよ」


足を避ければ避けるほどに、糸は2匹の好奇心をくすぐる動きをするようで、ぴょんぴょんと飛びかかってくる。

切れないって副会長は言っていたけど、やっぱり恐ろしい。


「ちょっと待って、本当にだめだってば」


何度か2匹を押さえ込もうと試したけど、力加減が分からずにするりぬらりと逃げられてしまう。


それを2匹はきゃっきゃっと楽しんでいるようだし。
子猫ってこんなに体力あるものなの?



なのに急にピタリと遊ぶのをやめた。


「ねー、これたべたいー 」
「おなかすいたのー」


2匹は座卓に置かれているお皿に鼻をピッタリとくっつけている。


「それはなに? 」


ここに運ばれてきたときには気づかなかったけれど、座卓に置いてあるお皿の中には、ラップされたおにぎりが2つと、その横に急須と置き手紙があった。


『お腹がすいたら召し上がってください。ボクの自慢の鯛めしです。 倫 』


わたしのために用意してくれてたんだね。
倫くんありがとう。
いろんな意味で助かりました。


それにしてもラップされているのに、よく匂いがわかったなと感心してしまう。
< 174 / 328 >

この作品をシェア

pagetop