猫の湯~きみと離れていなければ~
小さなお庭は、手入れの行き届いた日本庭園のようで小さな池と鹿威しがカッコーンと鳴って趣を出している。
だけど敷地の奥のほうから、改装作業のトンテンカンテンと金づちを打つ音と、新しい木の香りがしてくる。
まるでこことむこうの世界の時間の流れを表しているみたい。
そして遠くの方から賑やかなお囃子が聞こえてきた。
「お祭りでもあるの? 」
「今夜から猫町最大の感謝祭『鳳凰祭』がはじまるにゃ。その準備がもうはじまっているにゃ」
「へぇ、楽しそうだね」
行ってみたいけど、わたしはいつまでこの世界にいるんだろう?
というか、むこうの世界にもどるのはどうすればいいんだろう?
「副会、…長さんはどこにいったの?」
「猫の湯の代理で祭りの準備に行かされてるにゃ。女将さんとバカ息子は改装工事で手が離せないからにゃ」
今、バカ息子って聞こえたけどあえて触れずにおいておこう。
わたしもお祭りの準備に行ってみようかな。
人手は少しでもあった方がいいだろうし、それに泊めてもらったお礼も込めて何かお手伝いしたいし。