猫の湯~きみと離れていなければ~

あれから倫は戻ってはこない。

悲鳴が気になって改装現場に行ってみたけど、大工道具が放り出されたままになっていて誰もいないし。

部屋に戻ったわたしは制服に着替えをすませると、縁側に座ってぼーっと鹿威しの音を聞いていた。

休憩しているのか、首もとが白いカラスが1羽、塀にとまってこっちを見ているのが気になるけど。


スマホの時間は午前5時。
さっきからほとんど進んでいない。

ママはまだ寝てるんだろうな。
前の日はわたしの看病でほとんど寝てないはずだし。


ここに来てまだ半日なのに寂しくなってくる。


もしかしてここに10年ぐらいいて元の世界に戻ったら、わたしは魂だけ大人になってしまっているのかななんて思ってしまう。

逆に時間の流れが早くなってしまえば、戻ったときには周りはみんな年をとってしまうのかも。


なんだか浦島太郎の話みたい……


え?

それって…もしかして本当にここのスーパー銭湯・龍宮城のことなの?
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