猫の湯~きみと離れていなければ~

でも『抱えこんでいた』って。


「…泣いた理由を知ってるの? 」

「その為にここに連れてきた」

「…どういうこと? わたし、とんぼ玉を受け取りにきたんだよね? 」



泣いた理由をどうして副会長が知っているんだろう?
そういえば遇も知っている感じだった。

誰にも話したことがないのに。


もしかして


わたしは副会長の大きな顔をがっしりと両手でつかむと顔を近づけた。


「ちょっ、鈴っ、大胆すぎるにゃ」


何かを勘違いして副会長は動揺をしているけれど、そんなことはどうでもいい。


やっぱり違う。…あの子じゃない。



―― ガッシャンッ!


背後でなにかが割れた。


振り返ると宮と倫が固まっていて、足元には割れた花瓶が転がっていた。


「ご、ごめんなさいにゃん。お邪魔しましたにゃんっ」

「ボ、ボクは何も見ていないにゃ」


焦りながらそそくさと片付けをはじめる2匹。


……わたしは何かを勘違いされたみたい。


それよりも、倫の頭に立派なたんこぶができているのは気のせいではないよね?


「ちょっと待って、違うから。そんなわけないでしょ?」


呆れて笑いだしたわたしを見た副会長は、乱れた顔の毛並みを整えながら


「お前さんの猫嫌いも解消されたみたいだな」


と一緒に笑いだした。
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