猫の湯~きみと離れていなければ~

陽向が給食袋を使ってカラスを追い払っている間に、わたしが子猫を拾い上げてお社の下に隠れたの。


小さくて、細くて、弱々しくて。
でもあたたかくて。

わたしがまもってあげないとって一瞬で感じた。


カラスがいなくなってから、陽向と近くの動物病院に連れて行ったけど、飼い主のいない動物は診察できないって断られて。


なんてひどい先生なんだって文句を言いながら神社にもどったの。


それから少しだけ途方に暮れた。


陽向の家はハムスターを飼っていたし、うちはペット禁止のアパート。

お互いの両親に飼いたいって頼むこともできなくて。

じゃあここで飼おうってわたしが提案したら、陽向もよころんでくれた。


だから2人で本殿の下で飼うことにしたの。


すっごくわくわくした。

宝物をみつけたような、いきなりお兄さんお姉さんになったような気分だった。
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