猫の湯~きみと離れていなければ~
パパにもママにも友達にも。
誰にも内緒の二人だけの秘密。
拾ってきた段ボールの中にタオルでベッドを作って子猫の家を作ったの。
子猫は何を食べるのか知らなくて、適当に家から持ち寄った。
いりことかつおぶしとか、朝ごはんの玉子焼きとか。
陽向はハムスターフードとかひまわりの種を持ってきたこともあったの。
それぐらい猫に対しての知識なんてわたしたちにはなかった。
多分、その次の日だったと思う。
ママから夏休みになったら引っ越すって聞いたのは。
わたしが悲しむのが分かっていたから言い出せなかったって泣きながら謝ってきたのを覚えている。
もちろん悲しくてしかたなかった。
友達と離れ離れになるのは嫌だったし、それよりもやっぱり子猫のことが気になって。
わたしは陽向の家に住むから、パパとママだけで引っ越せばいいって本気で思ったし。
そういえば陽向と別れてしまうって実感はなかったような気がする。それだけいつもいるのが当たり前で、会えなくなるって実感がわかなかったんだと思うけど。