猫の湯~きみと離れていなければ~
というかこの会話ってもしかして、宮ちゃんと倫くんが付き合ってるってこと?
倫はわたしの背中に隠れると、チラっと顔を出してまた威嚇をしている。
「この暴力猫っ! 宮ちゃんがボクの面倒をみてくれるからいいにゃ! シャーッ」
「そういうところがダメだって言っているんだろうがにゃっ、シャーッ」
2匹は言い合いしながら、また威嚇しはじめた。
「お前たち静かにおしっ! それよりも、まあまあまあ鈴様、どうされたのです? 」
わたしの泣き顔をみて遇はわざとらしいぐらいに驚きながら、袖で涙をぬぐいはじめた。
「ちょっと子供のときの話をしていたの。…遇さん、昨日はご迷惑をおかけしました」
拭く力が強くて、少し頬がいたいけどされるがままにしておいた。
「そんなことよろしいんですのよ。鈴様は何もお気になさらずに」
それにしてもさっきから『鈴様』っていうのはなに?
それにその格好も。
遇は紋付きの着物を、茶トラの猫は紋付きの羽織と袴で正装をしていて、これから結婚式にでも参列するような雰囲気だ。