猫の湯~きみと離れていなければ~
「これは猫町の門をまもっていらっしゃる、招き猫の金さまと銀さまからの贈り物、猫玉(にゃんたま)だ」
「招き猫? にゃんたま? 」
副会長は布ごと猫玉を差し出してきたので、わたしは両手で受け取った。
猫玉と呼ばれたとんぼ玉は、相変わらず光を帯びていて、金色の曲線は光の粒子を撒きながら美しく流れている。
「猫町の大門に金銀の招き猫があったのを覚えているか? 」
あんなインパクトの強い門を忘れるわけもない。
その中にあった大きな招き猫も。
でも金色と銀色ってまさか…
「わたしのところに遊びに来ていたのは小さな子猫だよ? あんなに大きな彫像じゃないし」
「子猫が本来のお姿だ。あの像に宿っておられる」
やっぱりそんな感じのことか。
って、なんでだかこの世界はいろいろなことを簡単に受け入れられる。
「じゃあこれから門に返しに行けばいいの? 」
「返すなんてもった、…いや、とんでもないっ! 」
わたしの問いに、女将が何かを言いかけて、言い直した。
「じゃあどうすればいいの? 」
わたしは副会長に猫玉を戻すと、副会長は丁寧に包んだ。
そしてそれを持ったままわたしの横に腰をかけた。