猫の湯~きみと離れていなければ~
「それにしてもお前はラッキーだったな。金様と銀様のお姿なんて滅多に見れないし、見れれば幸せになれるらしいぞ」
「うん、寝顔なんてすっごく可愛くてね、しあわせ気分に満たされちゃったよ」
足の紐で遊びはじめたときはどうなることかと思ったけれど、あの寝てる姿は可愛すぎてまさに天使だった。
「いや、そうではなくて」
副会長は首を振りながらを話を続けた。
「猫生だ、にゃんせい。お前なら『人生』に幸せが訪れるってことだ」
なーんだ、それって迷信とか占いみたいなものなのね。
とは口には出せず。
だってそんなことを言われても、まあ、うれしいのはうれしいけれど。
今の状態で幸せになれるなんて思ってもいないし。
陽向に酷いことを言って、陽向には莉子がいて、変なクラスメイトには晒されて、そしてパパとママには心配と迷惑をかけているし。
ママが言うように前の町に戻ればこの状況を抜け出せて新しい高校生活を送れる。
でもそれがしあわせになるって言い切れる自信も確信もない。
じゃあ、わたしの求める『しあわせ』っていったいどんなモノなんだろう。
……『しあわせ』を思うと気分がへこんでくる。