猫の湯~きみと離れていなければ~

「それにしても猫玉までとは驚きだな。猫玉が贈られた者は家内安全、商売繁盛、万年健康と言われている」

「お守りとかお札みたいなものってこと? 」

「お前はまったく分かっていないんだな。猫玉は強力な神力を宿していると言われている」


というかその『言われている』って曖昧な……。


「あれを持っている者も見たことのある者もこの世界では誰もいない」


わたしだってまったく意味が分からない。
誰も持っていない物の効果やご利益を誰から聞いたっていうの?


「じゃあなんで長さんは猫玉を知ってるの? 」

「俺だけではない。この猫町では誰もが知っていることだ」


すごい矛盾を堂々と貫き通されてしまった。


「お前の世界でも宇宙人とかツチコノとか河童とか、昔ばなしの打出の小槌とか、誰も見たことはないけれども誰もが知っていることと同じようなもんだな」

「あとは龍宮城もねぇ」


遇が不機嫌そうに付け加えてきた。


ああ、そういうことね。
でも納得は簡単にできた。
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