猫の湯~きみと離れていなければ~
「おい、倫。これを神棚にお供えしてきてくれるか」
「はいにゃ」
副会長にお仕事を頼まれた倫は、嬉しそうに丁寧に両手で受け取った。
「バカ倫、絶対に落とすんじゃねーにゃ」
「シャーッ!」
「兄様、いい加減にしてにゃん。倫、行こうにゃん」
倫と仁は本当に仲が悪いみたい。
仁から絡んでいるようには見えるけど。
仁に牙をむいて威嚇しながら縁側をあとにする倫に、宮も付き添うようについていった。
「それで、遇さんのわたしへの頼みたいことってなんなの?」
「それなんだけどねぇ…」
遇は言いづらそうで、助けを求めるかのように仁へ目配せをすると、仁はうんと深くうなずいた。
覚悟を決めたかのような遇は大きなため息を1つ吐き出すと、わたしに視線を戻して正座をしなおした。
そこ横で仁も正座をしている。
何事かとわたしも思わず身構えて正座をしてしまった。