猫の湯~きみと離れていなければ~
「まぁまぁ女将、鈴に考える時間をあげてくれ」
「ああ、そうだねぇ。無理矢理はよくないねぇ」
考えていたわたしを、遇は出し渋って黙ってしまったと思ったかもしれない。
無言の気まずい空気が流れていく。
助けを求めて副会長をチラっとみると、にたっと笑ってくれた。
助けるつもりがあるなら早く助けてよ。
「鈴、招き猫様にご挨拶してきたらどうだ? 」
「うん、行ってみたい」
わたしは大袈裟に楽しそうにしてみた。
「じゃあ倫にすぐに奉納の魚を焼かせようねぇ。なんの取り柄もない子だけれど、料理の腕だけはいいんだよ」
遇もこの空気を変えたかったみたいで、さっと立ち上がると、仁を引き連れて戻っていった。