猫の湯~きみと離れていなければ~
どちらの像の前にも「龍宮城」とかかれたのし紙と一緒に、大量の猫缶がピラミッドのようにてんこ盛りにされている。
それまでに置かれていたと思われる奉納品は、全てが乱雑に端っこに寄せられていた。
「これ先月発売された最高級猫缶にゃん。ご利益を独り占めする気にゃん」
「みんなのお気持ちをないがしろにして、自分たちだけ目立とうなんて許せないにゃ」
宮と倫は、寄せられている奉納品を丁寧に並べなおし始めたので、わたしも手伝った。
あとからやってきた猫たちや続々と入ってくる観光客も手伝ってくれたので思いのほか早く終われた。
「ねぇ宮ちゃん、奉納するお魚は決まっているの? 」
ここまでに焼き魚はアジとイワシとサンマしか見ていない気がする。
「何でもいいけど、でも猫にとっては鯛と鳥の骨は固すぎて危険だからご法度にゃん」
「でもあれって…」
わたしは倫が風呂敷から取り出した魚を指差した。