猫の湯~きみと離れていなければ~
「兄様とわたしは母様の子としてこの猫町で生まれ育っているので猫又になれるかどうかは分からないにゃん」
「ボクは猫又になるほど長生きしていないごく普通の猫にゃ」
「じゃあ倫くんもここで飼い主さんを待っているの? 」
その質問に宮の顔がくもった。
ああそうか。
こんなことを宮の前では聞くべきじゃなかった。
倫が飼い主と共に旅立つなら、2匹は離れ離れになってしまう。
どうしようと思っていると、
「そうにゃ」
倫はハッキリと答えてしまった。
その答えに宮は下を向いて顔をそらしてしまった。
「ボクは飼い主様にとても愛されていて、同じぐらいボクも飼い主様を愛しているにゃ。会いたくて会いたくて仕方ないにゃ」
宮のことを考えると、申し訳なくいたたまれない気持ちになるけれど、倫にそれ以上は言わないでなんて言えないし。
もうどうしていいのか分からない。
「でも、ボクは宮ちゃんとずっと一緒にいたいから、ここから離れる気はぜんぜんないにゃ」
その言葉に顔をあげた宮を見て、倫は驚いてしまった。
「な、なんで泣いてるにゃ? 」
「泣くに決まっているにゃん」
宮の安堵した泣き顔にわたしは胸をほっとなでおろした。
それに、きっと倫の飼い主さんも、愛する倫の気持ちを優先してくれると思う。