猫の湯~きみと離れていなければ~
「鈴さんの猫ちゃんももしかすればこの町にいるかもしれないにゃん」
「ううん、それはないよ」
うん、それはないと思う。
会いたいけれど、きっとわたしのことを恨んでいるだろうし。
「そんなことないにゃん! 」
「そうにゃ。猫は忘れやすい生き物だけど、恩は必ず覚えているにゃ」
少し強めに話す2匹。
そうだね。
わたしは宮ちゃんと倫くんの言葉を受け止めようって思ったんだった。
「それでその猫ちゃんはどんな柄をしているにゃ? 」
「白黒ではちわれ……、」
「じゃあこれから探しに行くにゃ」
ふと目にした花屋の桶の下に白黒の子猫がいた。
子猫はわたしと目があうと、走りだし角を曲がって行った。
「待って! 」
「鈴さん、どこ行くにゃっ? 」
「ごめん、先に戻ってて」
似てた、
今の子猫、似てたっ
「待って! 猫ちゃん待って! 」
追いかけてどうなるの?
わたしが行けば怖がるだけじゃないの?
でも、会いたい