猫の湯~きみと離れていなければ~
「まったく情けない」
背後から低い声がする。
振り向くとそこには、右目に黒い眼帯をつけている虎柄の大きな猫がいた。
ブラックシャークとは明らかに格の違いがある。
「虎兄貴ぃー」
カラスはぽんっと変身をとくと3匹でその猫の側に走っていった。
これが遇が言っていた『冷血非道で金の亡者の宣伝部長 虎」って猫っぽい。
「俺が連れてこいと言ったのは風森鈴だけのはずだったが?」
この襲撃と誘拐の首謀者はこいつなのね。
にらまれただけで3匹はガタガタと震えはじめた。
怒ると相当恐いのかもしれない。
「まぁよいだろう。お前が鈴か? 」
「わたしに何の用なの? 忙がしいんだから帰らせてよ」
「鳳凰玉、もしくは猫玉をさしだせばすぐに返してやる。命は惜しいだろうからな」
ゆっくりと話す虎は不適に笑いながらわたしたちの横をのっしのっしと歩き、前に回り込んできた。
虎のしっぽも副会長のしっぽと同じようなカギしっぽで、先は2つに別れている。
ほうおうぎょくってなに?
というかなんで猫玉のことを知っているの?
わたしが何気にブラックシャークに目をむけると、1匹が目を反らした。
なるほど。
庭にとまっていたカラスはあの黒猫で、猫の湯を偵察していたに違いない。