猫の湯~きみと離れていなければ~
「今でもここは繁盛しているじゃない。猫玉なんて必要ないでしょ? 」
「そうだな。金など掃いて捨てるほどあるからな」
それなら何が目的なの?
というか、そんなことを遇さんの前で言ったら怒られるわよ。
キーッと怒り狂う猫の湯の金の亡者の姿が目に浮かぶ。
倫も同じように思い浮かんだようで、小さく『ぷっ』と吹き出した。
「じゃあどうしてなの?」
「客を取られるわけにはいかんのだよ。…俺たちはある人を探しているからな」
捜し人と猫玉、これがどう関係あるんだろう。
「分からないか? 人が集まれば繁盛する。繁盛すれば評判が広まる。評判が広まれば俺たちが探している人にも伝わる可能性がある。そうなればここに戻ってくるかもしれないだろう?」
「それって、浦島太郎?」
「貴様、なぜそれを知っている?」
虎は驚いたようにブラックシャークをにらみつけた。
勝手に話したとでも思っているらしく、3匹は必死に頭をふっている。
「龍宮城と人間でイメージするのって浦島太郎しか考えられないじゃない」
「…なるほど、さすがは俺様。宣伝効果は今でも抜群ということだな」
もしかしてこの虎って猫も案外単純なのかもしれないと思えてきた。