猫の湯~きみと離れていなければ~
「でもどうして探しているの?」
「姫様のためだ」
「どうぞにゃ。熱いのでお気をつけくださいにゃ」
黒猫の1匹がわたしと倫、虎の前にお茶をだしてくれた。
ということは、これから長い話がはじまるのかもしれない。
ここから早く帰りたいけど、帰らせてくれそうな雰囲気はないし。
それに、少しだけどおとぎ話の続きにも興味はある。
ブラックシャークは湯呑みを並べて、自分たち用のお茶も用意しはじめた。
わたしの湯呑みからはほんりの湯気がたち、猫たちの湯呑みからはたっていない。
どうやら人間と猫との温度差をかえてあるみたいなので、猫って本当に猫舌なんだと納得してしまった。
やっぱり接客業のお店の従業員だけあって、心配りが細やかなんだと思う。
あの強引な客引きさえしなければ、もっともっと繁盛しそうだけれど。
でも言わずにおこうっと。
龍宮城にアドバイスをしたってバレたら、遇の口からまた火が見えそうな気がするし。
というか猫舌なのに口から火…、熱くないのかな?