猫の湯~きみと離れていなければ~
「姫様と太郎は一瞬で惹かれあってしまってな、俺が大反対をしているのにもかかわらず、ご結婚の約束まで交わされてしまった」
「どうして反対したの? 」
「俺は姫様がお生まれになったときからお仕えしているが、あんなに幸せそうな姫様を見たことがなかったからだ」
「しあわせならいいじゃない。よろこんであげてよ」
しあわせだから反対するって意味が分からない。
大切な人のしあわせなら祝福してあげたいと思うけど。
あ、でもわたしはどうなの?
わたしは陽向と莉子をよろこぶことなんてできなかった。仲のよい2人を見ていたくないって思った。
もしかして、虎は乙姫さまのことが好きだったとか?
「お前、俺が姫様に恋愛感情を抱いているからだとか、低俗な考えをもっていないだろうな? 」
「違うの?」
図星だけど低俗って言われてしまった。
思わずぬいぐるみのように抱きしめている倫に顔をうずめてショックをやわらげた。
「太郎はお前と同じ状態で連れて来ていたからだ」
虎はわたしの足元に視線を送った。