猫の湯~きみと離れていなければ~

「だから俺はこの男を連れてくるのではなかったと後悔をしたんだ。こんな日々がいつまでも続くわけはないからな」

「幽体離脱のままだと何がいけないの? 体が死んでしまったとしても、本人がここに居るのが望みなら問題ないんじゃないの? 」

「お前、…もしかして長から聞いていないのか? 」


首をかしげるわたしを、虎はいぶかしげに見ている。


「猫には猫、人間には人間の魂の掟がある。破ればそれなりに課せられるものがあるということだ」

「どういうこと? 」

「ここには生存している人間が入るのは禁止されている。それはな、体と魂をつなぐその糸が切れてしまえば、魂は還る場所を失い時空の狭に取り込まれて永遠にさ迷うことになるからだ」


言葉だけじゃ簡単に聞こえるけど、多分、それってすごく悲惨なことになるってことよね?
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