猫の湯~きみと離れていなければ~
「でも乙姫さまと太郎さんは、お互いを思いやりすぎているだけなんじゃないのかなって思いました」
「…どういうことじゃ? 」
「あなたは自分を責めているみたいだけれど、太郎さんも同じように『自分のおかれた状況のせいで乙姫につらい思いをさせてしまった』と責めてしまっていて会いづらいだけなんじゃないのかなって? 」
「…そなたは太郎がわらわを恨んではいないと申すのか? 」
乙姫はわたしに寄ると話の続きを聞こうとかがみこんできた。
「これはわたしが思っただけのことですよ? 」
変に期待を持たせたくはないので、念を押してみた。
「多分ですけど、少なくとも太郎さんは亡くなる前まではあなたのことを愛していたんだと思います」
「…なぜそう思うのじゃ? 」
「わたしがあなたを乙姫さまだと分かったから」
意味が伝わらないようで、乙姫は眉間にシワを寄せてわたしを見つめている。