猫の湯~きみと離れていなければ~
『好き』って伝えられることは、なんてしあわせなことなんだと思った。
わたしのこの気持ちは
陽向を困らせることになる。
莉子を傷つけることになる。
絶対に伝えてはいけないもの。
こんな気持ちは早く消えてしまえばいいのに。
なのにどうして無くならないの?
この町にきても、何かあるたびに陽向がよぎってしまう。
「なぜそなたが泣くのじゃ」
乙姫は涙が止まらなくなったわたしを優しく抱きしめてくれた。
倫はわたしたちの隙間から手を出して、流れる涙をぬぐってくれている。
「わたしの気持ちは、持っていてはいけないものだから。あなたにあれこれ言える立場じゃないの」
「…そうか。そなたも苦しい恋をしておるのだな 」
わたしはうんとうなずいた。