猫の湯~きみと離れていなければ~
―― ドッカンッ!
「おい、邪魔するにゃ」
扉を叩き壊して入ってきたのは、副会長と遇と仁だった。
仁の手には大きなハンマーが握られている。
「母様これでいいにゃ? 俺は帰るけどそっちのは持って帰ってくるにゃよ」
「おまえなんかさっさと帰ればいいにゃっ」
そっちと呼ばれは倫はシャーッと威嚇しながら、でもわたしの背中に隠れていく。
仁はそんな倫をにらみつけると、さっさと出て行ってた。
嫌いならお互いがかまわなきゃいいのにって思う。
「鈴っ!? あんた泣いてるのかい? 」
乙姫に抱きしめられているわたしをみて遇の体が大きくなりはじめた。
「こんの厚化粧の化け猫めぇ、うちの鈴になにをしてくれたんだにゃーっ! 」
遇の口からチラチラと炎が見え始めた。
また本気で怒っているみたい。
ブラックシャークは怯えてしまって部屋の隅に固まり、ガタガタと震えている。
でもわたしは『うちの鈴』と言われてうれしくなって顔がほころんでしまった。
「そなたの言う通りじゃのう。恨まれてしまうとどんなに美しいわらわのことも『厚化粧』などと悪態をつかれるのじゃな」
オホホホと楽しそうに笑う乙姫にわたしも笑いかえした。