猫の湯~きみと離れていなければ~
「そういえば何組だったの? 」
ママが藤子おばちゃんの腕からわたしを外しながら聞いてきた。
“うちの子にさせてなるものですか”
という気持ちが伝わってきてそれも嬉しく感じる。
「人が多すぎて見れなかったの」
陽向の名前しか探していなかったなんて、口が裂けても言えるわけがない。
だから自分の鈍さだけが怒られる理由を選んでみた。
「そんなのかき分けて行きなさいよ」
さすが突進、いや突撃タイプ。
呆れた顔をしているママは予想通りの返事を返してきた。
ママはたくましいからできるんだろうけど、わたしには無理なの分かっているでしょ?
「陽向と一緒のCクラスよ 」
藤子おばちゃんが自慢げに言い放った。
というか、今なんて言ったの?
きょとんとするわたしに、藤子おばちゃんは今度はゆっくりと繰り返した。
「鈴ちゃんは陽向と一緒でCクラスだったわよ」
「あらよかったじゃない! これで何の心配もなくなったわね」
「陽向大喜びしてたから、早く教室に行って顔を見せてあげて」
嘘でしょ?
同じクラスなんて冗談じゃない