猫の湯~きみと離れていなければ~

日の入りの時間が近づくと、わたしは猫の湯のみんなと一緒に大通りの大門が見える場所に向かった。

慣れない下駄は歩きにくいけど、久しぶりに着た浴衣はワクワクしてしまう。そんなわたしに気がついて、お揃いの淡い藤色の浴衣を着ている宮が笑いかけてくれた。

なんだか小さな妹ができたみたいで、うれしくてますます笑顔になってしまう。

子供のときは、ママの趣味のピンクとか水色のパステルカラーのひらひらした浴衣ばかりだったから、この色は少し大人になったような気がする。



大門と大通りの沿道には、すでにたくさんの猫やあの世の観光客たちでごった返していて、一同に大門を見つめていた。

燃えたぎる真っ赤な夕陽が金色の光を放射しながらまもなく門の上にかかろうとしていた。
その側には丸い白い月が浮かんでいる。


「いいかい鈴、太陽の色が変わったらおいでになられるからね。よく見ておくんだよ」


“鳳凰祭”と言うだけあって、これから神獣の鳳凰がこの町にやって来るとか。

このお祭りの最大の見所らしい。


遇がいうように、夕陽がだんだんと朝日のような白い金色に変わりはじめ、茜色の空を琥珀色にかえてゆくと、町中のざわめきが消えていった。

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