猫の湯~きみと離れていなければ~

そして…



夕陽の中から紅く大きな孔雀のような鳥が2羽、音もなく姿を表した。



そのとたん、静まりかえっていた町に波がよせるかのように次々と歓声が沸き起こっていく。



「あの方々が神獣の鳳様と凰様。お二方ご一緒で鳳凰様と呼ばさせていただいているんだよ」


遇が拝みながら小声でおしえてくれた。

遇だけでなく、周りにいる猫や観光客も手を合わせていた。



鳳凰はルビーのように深く赤い体と、体の数倍の長さはある飾り尾は、赤と金の炎をまとっている。

飾り尾を流れるようにはためかせ、ゆったりとその翼を羽ばたかせるたびに金色の光の粉が舞い散り、空にいくつもの流線を描いていく。


その光景は神々しく、わたしは涙が流れていることにも気がつかず、魅入ってしまった。


鳳凰は舞うように町の上空をゆっくりと旋回すると、日の入りと共に大通りの奥にある神社へと翔んで行った。

その跡をたどるように、神社へ続く階段の灯篭と境内の松明に灯りが順々に灯っていく。



「ねぇ、長さん…。あの方たちだよね」

「…ああ、そうだ」


なぜかは分からないけれど、わたしを猫町に呼んだのはこの鳳凰だと感じた。
でも「なんでなの? 」とか、それ以上を副会長に聞く気にはならなかった。


「月が夜の頂上に登る前に猫の湯に戻ってこい。それまでは好きに祭りを楽しんでおけ」


副会長もそれ以上は答えるつもりもなさそうで、さっさとたこ焼の露店に向かって行った。

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