猫の湯~きみと離れていなければ~
わたしの気持ちを全く分かっていないママたちは、まるで自分たちが同じクラスになったかのように喜びはじめた。
まだ会ってもいない状態でこんなにも落ち着かないのに。
同じクラスだなんて、嫌でも毎日顔を合わせるようになるじゃない。
「陽向は寂しがってたもんねー」
藤子おばちゃんの腕から完全にわたしを奪い返したママは、わたしの乱れた髪を手ぐしで整えはじめた。
「陽向ね、ママが遊びに行ったら『まーた1人できたの? 』って必ずため息つくのよ。まったく、どーいうしつけをしてるんでしょうねー? 」
何度も聞かされているこの話。
笑いながら藤子おばちゃんに文句をつけるママは、仕上げにわたしの髪を片方の耳にかけると、満足そうに微笑んだ。
それを聞いて藤子おばちゃんもケラケラと笑っている。
「素直ないい子と言ってちょーだい。それにしてもあのバカ陽向がねぇ、鈴ちゃんのおかげでこの高校に入れるなんてねー」
「わたしのおかげって、…なに? 」
わたしの疑問に2人は同時に顔を見合わせると、大笑いし始めた。