猫の湯~きみと離れていなければ~

わたしも2匹の気持ちは分かる気がする。

無理に変えなくても、猫の湯みたいに昔ながらの情緒ある銭湯って懐かしい気持ちになって惹かれてしまう。きっとあの魅力と落ち着きに気づいて戻ってくるお客さんはたくさんいそうな気がするけれど。


鳳凰さまのご加護つきならなおさら。


そういえばお湯の効能に『心の傷』って書いてあったのは遊び心だと思っていたけど。

わたしが子供のときの記憶を呼び起こされて泣いてしまったのは、もしかしてそのご加護のためような気がする。



「宮ちゃんと倫くんは、鳳凰さまにお会いしたことがあるの? 」


2匹はめっそうもないという感じでブンブンと頭をふった。


「お姿を拝見することができるのは、ご飛来されるときだけにゃん」

「今回も綺麗なお姿だったにゃー。ボクもあんなしっぽがほしいにゃ」


倫は自分のしっぽを手に取ると、ぐいーっと引っ張って伸ばそうとし始めた。

真剣な倫には悪いけれど、その姿が可愛らしくて思わず写真を撮ってしまった。
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