猫の湯~きみと離れていなければ~
「…鈴さん」
宮がモジモジとわたしを見ている。
どうやら今の写真が欲しいみたい。
あとで送ってあげるからね
わたしが声に出さずにうなずくと、宮に通じたみたいで、宮はうれしそうにとうなずき返してきた。
それにしても、2匹とも会ったことがないのにどうしてわたしが呼ばれたんだろう。
この町に住んでもいないのに。
それより、これからお会いするって宮と倫に話すべきなのか迷ってしまう。
「鈴さんは長さんが特別なのは知ってるにゃん? 」
「どういうこと? 」
「あたしたちは“長さん”って気軽に呼んでいるけれど、ここだけの話……、」
宮は周囲を気にしながら小声になると、「きてきて」と手をまねいてわたしを寄せた。
一緒に倫も顔を寄せてきた。
「実は長さんは、鳳凰さまのお使いをされている格の高い猫又さまにゃん」
「長さんのおかげで猫の湯はご加護を授かっているらしいにゃ」
あの副会長が?
たぷたぷのお腹がすぐに目に浮かんできて、とても格の高い猫又にはみえない。
「鈴さんをこの町に連れてきても時間の流れが変わらないのは、長さんの力にゃん」
「昔、誰かが生きている人を入れてしまって時間が乱れたのをおさめたのも長さんの力って聞いているにゃ。でも秘密にゃ。…にゃっ! 」
倫が気づいたようにわたしを見てきたので、うんとうなずいた。
多分その話は虎が太郎を連れてきたときのことだと思う。