猫の湯~きみと離れていなければ~
――― ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、
宮のスマホが着信を告げた。
「もしもし? …うん、分かったにゃん。すぐに戻るにゃん」
「なにかあったにゃ?」
戻るという言葉に反応して倫がさみしそうに宮にたずねた。
「母様が鈴さんと一緒に戻っておいでってにゃん」
呼んでいるのは副会長だと思う。
もう時間になったのかもしれない。
わたしは空を見上げた。
薄かった満月はまばゆいほど輝きを強め、もうすぐ『夜の頂上』にたどり着こうとしていた。