猫の湯~きみと離れていなければ~
「宮、鈴の着替えが終わったら居間にお連れするんだよ」
「はいにゃんっ」
わたしの髪を乾かしている宮は脱衣場を出て行く遇に、きびきびと答えた。
これからわたしを『鳳凰さまの元へ送り出す』という使命にかられている感じだった。
やっぱり猫の町の住猫にとってはかなり凄いことなんだろうけど、よく分かっていないわたしでいいのかなって思えてきて、自然とため息がもれた。
「鈴さん、緊張してるにゃん? 」
「違うの。なんでわたしなんだろうって思ってね。鳳凰さまのこともこの町のことも何も知らなかったのに」
「繋がっていないことなんてないにゃん。きっとどこかでみんなご縁があるにゃん」
ご縁か…
そう言われればそうなのかもしれない。
副会長とわたしは高校で出会って、副会長はこの町と繋がっていたし。
だからわたしは猫の湯と龍宮城のみんなとの縁ができた。
でも鳳凰さまから呼ばれる理由はどこにも見当たらない。