猫の湯~きみと離れていなければ~
「鈴です。入ります」
「…おう」
副会長の、少し間のあった返事で居間への障子をあけると、その途端に遇と宮と仁がわたし向かってひれ伏した。
「なに? どうしたの? 」
「こんな薄汚い家にようこそおいでくださいましたぁぁー」
わたしじゃなくて金と銀に対してなのね。
副会長は苦笑いをしていてる。
「ましたぁぁーだってー」
「へんなこえー」
遇の裏返った声に、わたしに抱っこされている金と銀はまたまたきゃっきゃっと声をあげて笑いだした。
「こら、あなたたちは笑わないのっ」
「すずはおこりんぼー」
「こわいねー」
「みんな顔をあげて? この子たち、多分そんなの気にしてないから」
部屋に入るに入れないわたしをみかねて、副会長は“くだらん”という顔をしながらみんなをつついて頭をあげさせた。
わたしがここに入るときの副会長の間は、きっと遇と宮と仁がひれ伏そうとしているのに呆れていたからなんだと思う。
「招き猫様と鈴様はどうぞこちらへ、どうぞどうぞ」
また遇の『鈴様』が始まってしまった。