猫の湯~きみと離れていなければ~
へつらう遇が案内する場所には5枚重ねの座布団が3つ並んでいる。
しかも1枚1枚がクッションのように分厚く、豪華な刺繍模様が入っていて、かなりの高さがある。
…、わたしたちにこれに座れ、いや登れってこと?
敬意とかおもてなしとか、多分どこかで間違ってしまったんだと思う。
これをよろこぶのって、派手なお着物をきた落語家さんたちぐらいよね。
座布団全部持ってってー
と心の中で叫んでみた。
とりあえず遇の気持ちを傷つけないようにと、金と銀を1つの座布団に乗せると、落ちないようにわたしは側で手をそえた。
遇と宮は愛らしそうにこちらを眺めているけれど、金と銀は安定のない足場をわざと揺らすのが楽しいらしくて、わたしは気が抜けない。