猫の湯~きみと離れていなければ~


「なんで笑うの? 」


『新入生は各自教室に入り、保護者の皆様は講堂にお集まりください。繰り返します。新入生は………』


わたしの質問を上塗りするように、入学式の案内アナウンスが流れはじめた。


「じゃあママたち行くからね。終わったら藤子とランチしてくるからここで解散ねー」

「鈴ちゃん、帰りは陽向に家まで送り届けるように言ってあるから、迷子になる心配はないわよ」



入学式が始まる前に解散し、帰宅方法も勝手に決められている。

予定はないけど、わたしにだって都合はある。
陽向と帰るなんてありえないっ


「なんで?! 一人で帰れるよ? 」


わたしの驚きなんて、ママたちの耳には届いていないようで。


『パスタは? 』
『でも駅前通りに新しい中華バイキングできたのよ』

とランチの店を決めるのに夢中になりながら去っていった。


ママってば入学式にきたのか、藤子おばちゃんとの待ち合わせの為に来たのか分からないじゃない。


多分どっちもなんだろうとは思うけど。
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