猫の湯~きみと離れていなければ~
「今日はここまでね。倫くんにごちそうさまでしたは? 」
「残りは包んであげるにゃ。食べたくなったらまた来ればいいにゃ」
金と銀はうんとうなずくと手をそろえて「ごちそーさまでした」と息ぴったりにペコッと頭を下げた。
「それにしてもお前たちはどういう風の吹き回しなんだ? 今年も奉納品があれだけあるのに、なぜご法度の鯛なんかを? 」
「そうにゃ。今年は最高級猫缶も山積みされていたにゃ」
副会長と倫は不思議そうにたずねた。
「おなじのあきたー」
「かたいのあかないー」
金と銀がもうこりごりと言う顔をして答えたので、みんなはどっと笑ってしまった。
「いつもアジやサンマだと飽きるにゃん」
「そりゃそうだねぇ。猫缶は子猫さまに開けるのは難しいものねぇ」
龍宮城の失態に、遇は『ざまーみろ』という感じで手を叩いてよろこんでいる。
本当にきらいなんだと心から感じた瞬間だった。